【大久保登喜子の 今日も馬日和】〜Tokiko’s Horsy Journal〜 アーヘンCHIO大会に来ています

大久保登喜子 TOKIKO OKUBO

長年にわたって、「乗馬ライフ」「馬術情報」などの編集・制作に携わり、国内外の馬術競技会や、馬のイベント、選手、馬に携わる人たちを取材、交流を続けている国際馬術ジャーナリスト。著書に「ヨーロッパ夢の競馬場 ぜ〜んぶ馬の話」、翻訳書に「クラウス・フェルディナンドの触れ合い調教法 馬と踊ろう」、「ホースライディングマニュアル」などがある。

 

アーヘンCHIO大会に来ています

毎年恒例のアーヘンCHIO大会は馬術のウィンブルドン大会という別名がある通り、規模の大きさといい、レベルの高さといい盛大で世界最高レベルです。最終日に行われるロレックス・グランドスラムのグランプリ賞金は100万ユーロ、ざっと1億2100万円です。
アーヘンはドイツでも最西端、ベルギーやオランダと国境を接しているところですが、ドイツでは「馬」は重要な産業で、馬に関わって生計を立てている人も多数います。一般客の関心度も半端でなく、熱気がすごいのです。
通常の4スター、5スタークラスの競技会は木曜日に始まり、日曜日に決勝というのが常識ですが、今年のCHIOアーヘンは7月12日から21日までたっぷり10日間に渡って、障害馬術、馬場馬術、総合馬術、馬車競技、ボルティング(軽乗)の5種目が繰り広げられます。
週の前半には軽乗があり、日本ではあまり普及していないのが残念ですが、ヨーロッパのレベルは高く、まるで馬上のシルク・ド・ソレイユです。
障害や馬場、総合などのレベルの高い競技は18日の木曜日からスタート。私がプレスセンターに入った18日はウィークデーながら出展の店舗がぎっしりと並び、観客も満杯です。いつものアーヘンは雨が多く、薄ら寒く感じるのですが、今年はどんより梅雨寒の日本から来たので、晴ればれしている感じがします。
5月末にお届けしたローマCSIOも華やかでしたが、アーヘンCHIOはまるで別の世界です。日本からのエントリーは総合馬術の戸本一真だけでちょっと寂しいのですが、戸本選手のインタビューは追ってお伝えします。

 

アーヘンCHIOの会場、ウィークデーでもこの賑わい ©Tokiko OKUBO
 

アーヘンCHIOの会場、マーケットの賑わい ©Tokiko OKUBO
  
7月18日

ドレッサージュCDIO5*(グランプリ)は1位ドイツ、2位デンマーク、3位アメリカ

ドレッサージュのネーションズカップの課目はグランプリ。
個人成績の1位はベラローズ号に騎乗して82.783%を獲得したドイツのイザベル・ベルト、2位ドイツのドロテ・シュナイダーとショータイム号80.609%、3位イギリスのシャーロット・デュジャルダンとエーレンタンツ号79.152%。ベラローズ号はイザベルの2番馬ですが、精密な演技でジャッジ全員が1位を付けています。シャーロット・デュジャルダンはロンドン、リオ・オリンピックで金メダルを取った無敵のヴァレグロ号を引退させてからも、好成績を挙げているところはさすがです。アーヘンではエーレンタンツ号に騎乗して個人3位。
ダントツで1位のドイツはイザベル・ベルト、ヘレン・ランゲハーネンベルク、ドロテ・シュナイダー、ジェシカ・フォン・ブレドウ・ウェルンドルと、そうそうたるメンバーで他国チームの追随を許しません。イザベルとドロテ・シュナイダーが80%以上を獲得し、計242.3。
2位のデンマークは最近好調のダニエル・バックマン・アンデルセンとブルーホース・ドンオリンブリオ号が78.348%で、個人成績としては、デンマークのカトリーヌ・デュフォーに次ぐ6位に付けています。
3位はアメリカ。アデリーヌ・ライルとサルビノ号の76.870がトップで、平均点の高いチーム構成です。
ドレッサージュはこの後、グランプリスペシャル、最終日の自由演技へと続きます。

ドレッサージュ・ネーションズカップ(グランプリ)結果
1位)ドイツ&242.392
2位)デンマーク&228.174
3位)アメリカ&225.392
4位)スウェーデン&223.788
5位)イギリス&223.630

 

ギリスのシャーロット・デュジャルダンはヴァレグロ号を引退させた後も安定した上位にいる ©Tokiko OKUBO
 

イザベル・ベルトとベラローズ号、表彰式の後、ウィニングランを嫌って囲いの外に跳び出したところ ©Tokiko OKUBO
 
  
7月18日

障害馬術ネーションズカップはスウェーデン

メルセデスベンツ・ネーションズカップは2回走行で、午後7時半からのメインスタジアムでスタート。午後7時半から始まり、終了するのは午後11時というハードな時間帯ですが、観客はぎっしり、途中から雨がポツリポツリと来ましたが、お客さんはビクともせず観戦です。マーカス・アーニング、ダニエル・ドイサー、クリスチャン・アールマンなど地元ドイツのスターが入場すると、大歓声が上がり、空気が震えます。このどよめきもアーヘン大会ならでは、感動ものです。
1回目走行ではクリアラウンドは13名。スウェーデンはヘンリック・フォン・エッカーマン、ペダー・フレデリクソンなど当代のトップ選手を擁しています。1回目走行ではスウェーデン、フランス、アイルランド、オランダ、ベルギーの4カ国が減点4で並びましたが、深夜に再開した2回目走行で順位が大きく入れ替わります。
優勝スウェーデン(減点4)、2位ドイツ(減点5)、ドイツは全員が2回目走行クリアラウンドで、マーカス・アーニングは走行しませんでした。3位フランス(減点8)。
ネーションズカップは、グローバル・チャンピオンズ・ツアーなどに比べると、賞金が低いので、トップ選手が出たがらない風潮がありますが、メルセデス・ベンツがスポンサーのアーヘンCHIOでは優勝チームに11万ユーロ(約1320万円)、2位に8万ユーロ、3位に6万ユーロと高額賞金がついています。

メルセデスベンツ・ネーションズカップ結果
1位 スウェーデン   減点4
2位  ドイツ     減点5
3位  フランス    減点8
4位  アイルランド  減点12
5位  アメリカ    減点23 (参加7カ国)

 
 

メルセデスベンツ・ネーションズカップ2位のドイツ、のダニエル・ドイサーとカリストブルー号、タイム減点1のみ ©Tokiko OKUBO
 

メルセデスベンツ・ネーションズカップ3位のフランス、ペネロプ・ルプレボとバンクーバー号、2走行クリアラウンドでフランスの3位に貢献 ©Tokiko OKUBO
 

ドイツのシモーヌ・ブリュムとアリス号はトライオンWEGのチャンピオン、アーヘンでは2走行ノーミスでドイツのネーションズカップ2位に貢献 ©Tokiko OKUBO
 

スウェーデンのヘンリック・フォン・エッカーマンとマリールー号、2走行クリアラウンドでスウェーデンを優勝に導いた ©Tokiko OKUBO